※桓騎視点

※合意してません



桓騎は肩に担いでる男から漏れ出る呻き声を羽虫の羽音ぐらいにしか思っていなかった。
手首と足首、股をきつく縛り上げられ、それに加えて麻布を咬ませ後頭部できつく結んでいるので声も自由にあげられず芋虫のごとく背中をしならせる事しか出来ない男を、いつも桓騎が愛用している室へと運び込んで行く。日当たりがそれなりに良く、広々としており各地で強奪してきた調度品を飾っている。
室に入り真っ直ぐ寝台へと男を運んで行く。男はと言えば耳元で声にならない声をあげ、こちらを抑制するかの如くひたすらにうなり声をあげているが、桓騎は気に止めず寝台の前に立ち止まった。
肩に担いでいた男を寝台へとまるで荷物を降ろすように無遠慮に転がす。痛みがあろうが無かろうがそんな些細なことは桓騎にとって興味がなかった。
元は転がした男の部下に非がある。しかし部下の非は将の非。桓騎には関係がなく、黒羊丘でこの男に食ってかかられた時にほんの僅かに興が乗ったので、自分の屋敷に招いた。最も、招いたというより強制的に連れてこさせたと言った方がより近いのだが。
取るに足らない微賤の出の将ということは知っていた。己よりも知力は足らず、ただ真っ直ぐに突き進んでいく。この男が目障りだと分かっていてこの行動に出た。目に光を失わないこの男が光を失う時は、仲間を亡くす時だと桓騎は十二分に判っているが手に掛ける事は表向きには許されてない。それならば陵辱までなら死ぬこともなく咎められることも、またこの男が性格から想像して表立って口外することもまずない。外の土壁さえ作ってしまえば後はどうにでもなるだろうと桓騎は予測立てていた。
羽織を脱ぎ捨て、片膝を寝台に乗せると木製で丈夫に作られてはいるものの流石に男二人が乗ると軋みをたてた。桓騎は気にせずもう片方の膝で寝台に乗り上げ、男の腿を跨いだ。
両手首だけが縛られている腕は自由に出来るので肩で腕をやたら振り回しているが、腿は縛っているおかげで固く綴じられている。
無様だと桓騎は思った。この状態で逃げ出そうと思えば逃げられる。元野党をしていたこの実、殺されることが無いのならば這ってでも逃げ出せばよいものをこの男は逃げ出そうとしない。目は隠してはいないので、眼の奥にある光を未だ消え失せてはおらず、ひたすらに眉を寄せ桓騎を睨みつけていた。憎悪、それから嫌悪のみを桓騎に向けてくる男の両目を潰すことだって桓騎は容易に出来たがそれをしたところで、この男の心根が折れるかと言えばそうではないだろう。
「いい加減、黙ったらどうだ?」
腕を伸ばし、男の顎へ手をかけ指で頬を掴みうなり声を納めろと提案したが男の声はひたすら何かを言い続けていた。無論、言葉になっていないためそれがなにを意味するかは分からない。
少年から青年になりたての肌は柔らかく、桓騎は戯れ程度に男の頬を掴んでいる指にほんの少し力を入れ柔さを確認してみる。女の乳房とはまた違った肌質ではあるものの、指先に吸い付いてくる瑞々しさがあった。人差し指の関節を曲げ頬へと数回滑らせてみる。やめろ、と言うように再びうなり声を出し自由になっている首の根元を左右に振り指を頬から離させようとしているが、そんな簡単に放すままいと指と手のひらに力を込め、男の頭部を寝台に押し付けた。
「無駄な抵抗すんなって。やる前から疲れんだろうが」
幹部が言うには相当抵抗したらしく、最初はそのまま連れて来る予定だったらしい。説得は徒労に終わり引き連れていた兵数人で男を縛り上げ、挙げ句には噛みつこうとしたので今なお麻布が口に咬まされている、ということらしい。抵抗しなければもう少し丁重に扱ったかも知れないが、その可能性を潰したのは紛れもなくこの男だった。
桓騎は膝立ちになっていた腰を下げ、男の腿に何の断りも無く体重をかけて逃げられないようにしてやる。この度に及んで逃げようとはしないだろうが、反抗的な目は斬りつける機会を窺ってはいると桓騎は踏んでいた。
ご自慢の肩にぶら下げている剣は幹部に取り上げられ、この屋敷のどこかにはあるらしい。曰わく、鍔に飾られている宝石は秦国以外のもので、また刃も歩兵が使用しているものにしては程度が良すぎる代物なので自軍の物にしてもなんら問題はなかった。しかし後で喚かれると面倒なことになりそうなのは目に見えているので、屋敷に放置してあった。
上半身を滑らせ、顔を抑えつけたまま桓騎は面を男に寄せる。吐息がかかるほどの距離で、男の歪んだ表情を舐め回すように見下しながら下瞼をゆっくりと上にあげ目を細めた。
「なぁ、下僕信」
信と呼ばれた男は目を見開いて腕を振り下ろそうとしたが、先に桓騎は腕を伸ばし手首を寝台に縫い止め制止させた。
「下僕じゃねェとでも? 簡単に縛り上げられてる癖にな?」 
向けられる視線には腹立たない。砂鬼に拾われる前から向けられていたものだ。憎しみが目一杯注がれた視線には愉悦さえ覚える。それとは逆にいつまで経っても小うるさい口に桓騎は顎に添えていた指を外し、拳を作り鼻へめがけて瞬時に振り下ろす。男の鼻腔の奥が拳の衝撃で切れたのか、白唇部に血が一筋垂れてくる。
「少しは黙ってろ」
声は収まったが、眼には未だに光は消えていない。その瞳に桓騎は満足し喉の奥で低く笑いながら握っていた指をほどき、襟元に手をかけた。縫い止めている手首にほんの僅かに力を込め腕を自由に動けないようにしてやり、それから共襟の間へ手を差し込んで行く。何が行われるのか検討がついていないであろう男が頭だけを持ち上げ桓騎の手の行方を視線だけで追い、先ほどの憎悪とは一転して不安げな色が眼に浮かんでいる。桓騎がその表情を見逃すはずがなく、口元に笑みを浮かばせながら話しかけた。
「何するか分かんねェのかよ? 飛信隊隊長殿はガキなんだな」
「んむっぅ!」
一際大きく声をあげ反論をしたかったのであろう男の声は唾液でべとべとになった麻布に呻きとなって消えていく。桓騎はそのまま手を奥まで進め、体温が手のひらに感じる胸肌へと到着した。筋肉で覆われているまだ発展途上の身体は力は込められておらず柔らかさを保っている。桓騎自身の胸板より幾分薄い筋肉を手のひらで何度かさすり、そして指の腹が最初の目的地へ到達した。
不意に指の腹が触れた所為か、男の肩が小さく反応する。どうやら感じない訳ではないらしい。
娼婦の中にはこの箇所が感じにくい女もおり、反応を返さない者もいるがこの男はそうではなかった羊で桓騎は目を細め男の表情を盗み見る。何が起こったか分からない、困惑した表情が現れ今度は意図的にそこへ触れてみる。
「……んっ……」
「へぇ……」
桓騎は思わず感心の声が漏れ出てしまった。ここまで来た態度とは一変し、大人しく控え目の鼻にかかる声であったことに僅かにだが驚きが隠せなかった。もっと拒絶であったり、否定であったりするものかと思いきや受け入れるとは。桓騎は心の中でほくそ笑む。おそらく誰一人としてこの男の身体を暴いたことがないのだろう。初物は面倒なこともあり好きではないが開花させていくのは嫌ではない。
まだ反応しきれていない突起を軽く押し潰してみる。親指の腹で数回撫でてみると幹が育ち芯を持ち始めた。続けて芯の周りに薄く色づいているであろう縁をなぞる。視線を僅かに上げ桓騎は男の反応を伺ってみると声を出さず、この期に及んで行為に対して気がかりなところがあるのか眉根をよせながら指の様子を眺めていた。
上げた視線をすぐさま戻し、寝台に縫い止めていた男の両手から手を放し、結ばれている腰紐を片手で解く。適当に結ばれている麻紐を桓騎は指先で器用に解き、端をつかんで一気に引き抜く。男が着ている青い襤褸服の共襟に前腕をわざと立て、胸の上から滑らせるように寝台へと落とした。普段から薄い襤褸服を纏い戦場には胴を身につけていく男のあまり日に焼けていない胸が桓騎の眼前に広がる。肌と乳の境界を縁をもう一度なぞり、今度は胸全体へと手を這わせた。わき腹や胸横、脇には未だ治っていない傷も多くある。黒羊丘での戦い方からして自ら先頭に立って隊を鼓舞するのだろう。分かり易く、それでいてあまりにも率直すぎると桓騎は思った。
引き抜いた紐をどこかに放り、空いた手はまだ胸に被さっている襤褸布を再び落とし、反応していない反対の乳豆に指の腹を置く。胸とは違う柔らかさを持っている突起は反応をせず、静かに待ち構えているようにひっそりと身を潜めていた。先ほどと同じく親指の腹で数回さすってやると簡単に反応を見せる。意志ほど身体は強情ではないらしく、素直に反応をしてみせた。桓騎は手応えに気をよくし、突起を弄るのをやめそのまま肌に手を滑らせながら下半身へと降りていく。腹筋にはうっすらと産毛が生えているかいないか分からないほど体毛が薄くその縦の溝を人差し指でなぞりながら下ると胡服の紐に当たる。紐を解き、だらしなく広がった履き口を一気に麻紐でまとめられている太腿まで引きずりおろすと、僅かに形を見せている男の陰茎の影が桓騎の目に飛び込んできた。乳頭を軽く触れただけなのにも拘わらずあっさりと反応を示してみせる。桓騎は口元に僅かに笑みを浮かべると、降ろしてきた手のひらを下履きの上に優しく添えてやる。まだほんの僅かに芯を持ったぐらいで肉茎の形を確認するように掌で一度大きくさすってやった。
「んんっ?!」
乳首を触っていた時よりも大きな声が上がり、上半身を左右に振りながら拒絶反応をしてみせる。やはり気丈を保っていても、弱点はみな同じと言うことがわかり桓騎は無視してもう一度陰茎をさすり上げた。
太腿に力を込め、桓騎自身の掌にどうしても反応しようとする男の愚息に叱咤しようとしているのだろう。男は桓騎の手を見ながら何かを呻いているが、当の桓騎には知り得ないことなので、男の呻きをよそに下履きを取り払うために桓騎は乾いていた下唇を一舐めし口を開いた。
「腰浮かせろ」
体重をほんの少しだけだが掛けることをやめ、男に腰を浮かさせる。下履きの結び目が背側にあるのでそのままだと外しにくい。このまま引きちぎるのも悪くはないが手間を取るぐらいなら下に敷いている男を言葉で屈従させた方がよっぽど早く終わる。
桓騎は手早く腰裏に手を滑らせ下履きの結び目をほどく。
ここまで三度紐をほどいているがどれも無秩序な結び方でこの男の性格をよく表していた。細かいことを気にすることなく進んでいく。桓騎は紐と一体になっている下履きを引きずり出し、寝台の外へ放る。
傷が少ない腰回りはあまり日に焼けていないのか、健康的な肌が目に映る。緩く屹立している陰茎の下に隠れている茂みに手を這わせてみる。下半身の血の巡りが良くなっている影響か、少し汗ばんでいた。
薄いともいえる生え揃っていない毛をなでおろし、桓騎の節が浮き出し分厚い皮で覆われている指がいよいよ男の陰茎が取り絡められた。この上なく優しく握りこむと力の抜けた体躯のように自分の力で持ち上がっていかない。
指を軽く曲げ至極優しく握りこんでやる。
「んッ!」
男が声を上げ腕と首を振ってこれから来るであろう快感に備えて拒絶してみせた。しかし桓騎の指は次第に肉茎の形と同等に指の筒を作ってみせ、亀頭が剥かれている皮を握りながら一度上に扱いてみせる。
「んぅッ!!」
やはりここは急所のようで上げたくもない声が上がってしまうのだろう。表情を確認するために桓騎は片目の瞼をわずかにあげて男の顔を見やると上げている二の腕に顔を寄せ、こちらから隠すように面を横に向けていた。それでも必然的に上になってしまっている耳と首の紅潮は何一つ隠せていない。
「バーカ」
そんな男をよそに桓騎のもう片方の指は男の性器ではなく腰骨をなぞり皮膚の薄い鼠径部を中指の腹で優しくさすってやる。先ほど茂みを触った時と同じく、鼠径部はより汗をかいているのが分かる。そこから男の汗と何日も湯浴みをしていないであろう臭いの入り混じった独特の体臭が鼻についた。
さらに下へ身体の輪郭をなぞっていく。股座の骨から恥骨、もう片方の手で触っている陰茎についている陰嚢から会陰へ。ふっくらと赤黒く湿っているそこに親指の腹を押し付けるが、特に反応は示さない。この箇所でも気をやることが出来る者もいるということは知識では知っているが、桓騎が見たことはない。この男をそう仕向けても良いがそれはまだ先の話だった。
腰をあげて男に乗り上げていた身体を退け、短刀を手にし再び桓騎は寝台へと戻る。男の腿と足首を縛っていた麻ひもを逆手で切り、鞘へしまうと備え付けられている机の上と置き戻し、再び寝台へ戻ると抵抗を見せようとしてくる男の膝に手を起き、両脚を割り開く。動かないよう腿と踵の間には自身の腿を入れ蹴られないようにしてみせた。
行為は続けられていく。桓騎の持ち上げられた指は更に下へと滑り落ち会陰をもう一度押し、それから下のなだらかな斜面を下り、ついに目的地へと辿り着いた。人差し指の腹で襞をなぞる。生理現象なのか、優しく触れる度に窄まりがひくりと収縮してみせる。
「ッ……」
丁寧に襞を一本確かめるように指先で少し押し下げる。色づき、時折恥ずかしげに小さくなろうとしており、男から息を詰める声になっていない音が上がるのが聞こえた。近くに寝台の上で木簡を広げる際に使う小さな青銅製の燭台の中に浸されている油を指先に纏わり付ける。桓騎は粘度があるそれをつけておけば、濡れない直腸でもなんとか滑りが良くなるだろうと考えそのまま先ほど弄んでいた男の菊門の入り口に指の腹を這わせ上下に塗りつけた。指を上下させる度に一々動く肛門はまるで指を誘っているかのような、先ほどの恥じらいはどこへいったのかという仕草を見せつけてくる。指先で窄まりを僅かに広げ、そのまま最初の関節まで埋め込んだ。想像より抵抗は見せず、女の膣の中よりも幾分か圧が強い。壁の裏側をなぞるようにそのままゆっくりと指を押し進める。二つ目の関節の節まで辿りつくと流石に菊門の入口が指を異物と見なして硬く閉ざそうとする。それはそうだ。普段は排泄にしか使用しない場所をわざわざ性器に見立てて猛りを突き立てようとしているのだから、物好きとしか言いようがなかった。男はそこしか受け入れる場所がないので、否が応でも腸壁を慣らさないことには挿入もままならない。女のように無理矢理入れても蜜が滴ってはこないので手間ではあるが慣らさなくてはいけなかった。
男の腸壁が指を押し戻そうとしてくるのを無視してそのまま指の根元まで押し込んでいく。中指が奥まで辿りつくと、入口とは変わり指先に吸いつくように甘く纏わり付いてきた。
指の腹で腸壁の奥を摩り上げてみると女の蜜壺とは違った痼りのような物に触れる。数回撫であげると、握りこんでいた男の陰茎が反応を示した。
「ッ、ッんん……!」
生まれてこの方知らない感覚に驚いているようで、腕で隠していた頭をもたげさけ指を静止させたいようで縛られている両腕を上部から降ろし、手を静止させようと男の両手は手首を掴もうとするが幹を扱いてやると両腕が面白いぐらいに跳ね上がる。
女を知らないのは当たり前だが、他人に性器をこの年になるまで扱かれたこともない。この戦乱の世において真率な性根を保っていられるその心中は桓騎にとって興味そのものだった。今はそれを横に置きこの状況を愉しむとした。
腸奥にある痼りを幾度か摩り、それから柔らかい内壁を愉しむように指を返す。短く揃えている爪先が先ほどとは違う箇所に当たり男の身体が大げさに弾む。
反応を示していた肉竿からとろりと透明な涙が断続的にこぼれ始めている。耐え性がない男根は次の快楽を待ちわびているようで、桓騎の指や手の平を遠慮無く濡らしていく。その滑りを利用して幹全体と裏筋に掌を擦りつけ、亀頭を包み込むように手の平全体で握りこみ鈴口を擦ってやった。
「ッ、んッ、ぅ、!」
直接すぎる刺激が男の脳を揺らしたのか、呻きが一際大きくなる。その反応に桓騎は気を良くし続いて親指の腹で爪先を立て尿道の入口を数回引っ掻いてみた。それに続く裏筋もなぞるように表皮の周りを撫でてから再び鈴口を指の腹で優しく叩いてみる。男の腰が大げさに弾み、それを押さえつけるように桓騎は膝と腿に力を込め、逃げないよう押さえつけた。
鈴口を刺激していた親指は亀頭の括れをこすり、幹から僅かにふっくらと充血している尿道へと刺激を絶え間なく送っていく。その間にも男の陰茎の鈴口からはとめどなく透明な先走りがあふれ、桓騎の指へと垂れていく。滑りが良くなり男を追い立てた。
「んんっ、んっ、んんぅ! んっ!」
「何言ってるか分かんねェな」
根元から無遠慮に扱きあげ、また後孔を解していた指も同時に突き立てた。男が首を左右にふり行き過ぎた快感からどうにか逃げ出そうとしているがそうはさせない。
桓騎は腸壁の奥を穿っていた指を一度抜く。引き抜く間際、指を食んでいた肉環は抜かないでと言わんばかりに指の関節をわざわざ締め付けていたがおそらく男自身は気がついていないだろう。桓騎は胸中でほくそ笑み、人差し指と中指の二本にしてから再び奥へと潜り込ませた。難なく飲み込んでいく腸壁は再び迎え入れた指を、喜びを隠さず包み込む。
奥に座するしこりを二つの指の腹でこすると再び男の腰が跳ね上がり、そのまま太腿を震わせた。
「こうされるのが堪んねェのかよ?」
「んぅ、んぅう!」
言葉にならない嬌声のようなうめきで必死に首を横に振りながら否定する。しかし桓騎は未だに剛直な態度を示す男に愉快ささえ感じ、指を入口まで引き戻し一気に最奥まで指を突き入れた。
「んんーッッ!」
その途端男が目を見開き、握っていた男の竿から先ほど溢れさせていた先走りより更に多い量がとぷりと溢れ出してくる。両腕は再び上にあがり何かに捕まっていないと気をやりそうなのか前腕に力が込められているのでおそらく寝台に敷かれている布でも握っているようだった。
桓騎は中腰になりながら腰紐をほどき、裾を寛げる。下着を手早く取り去ると赤黒く既に勃起した男根を取り出した。男の幹から指を外して先走りを手のひらに塗りつける。鈴口に刺激が行くと男の意味のない嬌声が聞こえてきた。
塗りつけた先走りを自身の男根の切っ先と雁首に塗りつける。いくら内を解したとは言え、勝手が違うのは確かだ。行為に自身への痛みは求めていない。
亀頭の先を男の後孔にあてがう。先ほどまで解していた窄まりがせがむように収縮し、飲み込みきれていない融解された油がとろりと溢れ出している。それを切っ先にまとわりつけ、会陰から陰嚢の裏までを桓騎の陰茎で数回なすりつけた。それから自身に手を添え、腹に力をかけながら男の奥へと侵入していく。肉の圧で食いちぎられそうになるが、そのまま息を一度大きく吐き出しそれから推し進める。途中、しこりを掠めると男の身体が律儀にも反応を示し、更に奥へと穿つ。
「力、抜け」
「んんっ!」
無理、と言ったところだろうか。首を左右に思い切り振り言うことを聞かない身体にどう力を抜いて良いか分からず、困りあぐねているようで桓騎は手助けをするように握っていた男の陰茎を指を筒のようにし思い切り扱き上げる。多少乱暴にしても先走りのおかげで滑りが良くなっており、むしろそれがより強い快楽となって男の身体の反応に作用するのが分かりきっていたので、無遠慮に手を上下に動かした。
「ッ! んんっ、んぅ、んん!」
「身体は分かりやすくて良い」
口にしてから、残りの根元を勢いづけながら埋め込むと扱き上げていた肉竿から透明な汁がとめどなく溢れ出させる。握っていた親指の爪先を奥へとねじり込むように指に力を込め弄ってやると肉環が呼応するように桓騎の男根の根元を締め付けてきた。それと同じくして内壁がうねり奥へ奥へと甘く誘われる。
男の陰茎を握っていた指を外し、両手で男の腰を持つ。女の身体よりかは掴み難いが少なくとも自分の身体より薄い男の体躯は頑丈で、激しく突き動いても早々に音を上げることはないだろう。
男根を入口ぎりぎりまで引き抜き、添えていた手に力を込め男の腰を引き寄せるのと同時に自分の腰を勢いよく臀部に打ちつけ、切っ先を最奥へと穿ち埋めた。
「ッッ!!」
目を見開きながら嬌声を漏れ出さないよう空気だけを喉で吸い込み声を押さえ、男の陰茎からは再び先走りが流れ出し腹筋の溝に滴れ落ちた。両足を無理やり開かされ恥部は桓騎の目に惜しげもなく晒され、それを面白おかしく思いながら犯している自身も大概頭が飛んでいるとは思っていた。それでもこの男のことを少しだけ知りたくなり、更に腰を押し進める。桓騎の亀頭の先が最奥の壁に触れ、撫で上げてやるとつま先まで一気に力が入り男の腰が上下に揺れる。
「――ッ、んぅ、んんッ」
桓騎が再び腰を引き戻し、今度はゆっくりと内壁をなぞるように最奥まで埋め込む。腸壁は熱く、肉環は拒絶し口を引き結ぼうとするのに対してしこりから奥はぬるりと陰茎に内膜がまとわりつき奥へ導くように絡みついてきた。ぐるりと円を描くように桓騎は腰をやや捻り、内に当たる箇所をいくらか変える。その度に男の喘ぎは上がり、下に敷いている布を強く握りしめてやり過ごそうとしている。
桓騎は腰を掴んでいた手を離し上体を前方に倒してから顔を耳元に寄せ、敷布を握っている手の上に自身の分厚い手のひらを重ね両手を握りしめてやりながらひっそりと囁いた。
「初めてのくせに奥で感じンのかよ? とんだ淫乱じゃねェか」
「んんんッ!」
今までより幾分大きいうめきが飛び出す。桓騎は唇を近付けていた耳朶から顔をあげ、掴んでいる手を改めて強く握り込め腰を何度も引いては戻すを繰り返した。目の端に最初に僅かに弄った胸の突起が上気している所為か紅く色付き、乳頭は硬さを増しているのが必然と写り込む。突き上げる度に上下に揺れ動き刺激を待ちわびているように見えた。
強おもえい力で掴んでいた手から指を離し、その指をそのまま男の胸へと羽ばたかせ、静かに胸へと止まる。胸骨のあたりからは汗が滲み出しており時折一筋胸筋を伝って流れ落ちる。そのしっとりと汗ばんでいる肌に触れ、指先だけで筋を辿りながら再び桓騎の指は胸の突起へと伸ばされた。先に触っていた時よりも芯を保ち、人差し指の先で上下に弾いてやると肩を大きく震わせ男の瞳がこちらへ敵意を増幅させながら睨みつけていた。
とは言え、頬は紅潮し額にも汗が滲み責め苦で呼吸も上がり口で空気を必死に求めているので、様にはならずむしろもっと欲しいと求めているかのように思えるような表情をしている。桓騎はそれに応えるべく、今度は中指と親指の腹で乳頭の幹をつかみ、指先に力を込めてつまみ上げながら人差し指の爪先で器用に引っ掻いた。鬱血し、より敏感になった乳首を弾かれ男の目が大きく開かれる。
「っ!!!」
「ま、こっちも尻穴もこれからか」
自然と零れた言葉に自身でも軽く驚きながらもう一度指先に力を込めかりかりと爪を立てる。痛みで感覚が鋭くなっているのか、胸からの快楽を拒絶すべく顎を仰け反らせながら肌よりも幾分白い喉元を無様にも桓騎の双眸に晒した。
指を唐突に離し、再び男の腰を握る。乳首を弄る為に緩く押し込んでいた陰茎の挿入は再び激しい動きへと変わる。腸壁を惜しみなく自身の亀頭で穿ち、雁首を引っ掛ける。その度に男の腰がだらしなく上下し、自ら腰を揺らしながらもっとと最奥までの刺激を求めた。当の本人は気がついていない。
「んっ、ん……ぅうっ、……んんッ!」
それに釣られるように桓騎も徐々に押し引きする動きを早めていく。肉環が限界を伝えようと、桓騎の肉竿の根元を食いちぎられそうなほど力を込められ、それに抗うように桓騎は一旦埋め込んでいた陰茎を男の内壁から取り出し、幹を窄まりに数回こすりつけた。腰を持った手はそのままに男の身体をひっくり返し、背をこちらに向け腰だけを上げる体勢になる。男が肩越しから桓騎の表情を確認するように不安げな視線を投げかけてきたのを合図に腰を掴んでいた片手を男の肉竿の幹に指をかけ猛烈な速度で扱き出した。
「っ! っ!?」
突然の事態に男は思考が追いついていかないようで肩を震わせ、喉から出して喘ぎはつっかえ思うように言葉になっていなかった。桓騎の手のひらは容赦なく男を追い立て、そのまま呆気ないほど簡単に吐精してしまう。何回か分けて吐き出される白濁は寝台に敷かれていた麻布を汚し、次第に勢いが弱まり情けなく精を漏らしながら背と腰が波を打っていた。それもようやく終わると上げていた腰はだらしなく突っ伏し、男は吐精の余韻に浸っているらしく荒い呼吸はそのままに小刻みに震える腰の痙攣を抑えようとはしなかった。
高みへと昇った男の腸壁は桓騎の陰茎を締め付け、桓騎は奥歯を噛みながら静かに耐えしのぐ。まだ精液が溜め込まれ重たい陰嚢を男が絶頂から戻ってくるよう臀部に大きく打ちつける。途端、背が跳ね普段はつり上がっている眉も、必然と垂れ下がり何が起きているか把握出来ないようで、再び腰を引きもう一度最奥へと桓騎は肉欲を埋め込んだ。
「まだ俺が、出してねェ」
そう呟き、口答え出来ないよう口に咬まされ後頭部で結ばれていた麻布の結び目をほぐした。すっかり唾液が目一杯ふくまれ、許容量を超えた麻布の唾液は滴り落ち情けない音をたてながら寝台に墜ちていった。そのまま手早く左手を男の顔の前にやり手のひらを口元に当て、塞いでやる。体温が上がり生暖かくなった吐息が直接当たるのを感じ、反対の手はより深く根元を呑み込むように肩口をひっつかみ無理やり胸を張らせた。
背が弓のように反る。先ほどより更に奥へと陰茎が呑み込まれていく。肉環は空気を求めるように桓騎の陰茎の根元を食んでは開きを繰り返し、それによりより最奥へと誘われていく。
「んむ、ぅ、んんんっ!?」
呼吸を塞がれ男は首を振りながら手を引きはがそうとするが、桓騎は構わず内壁を探る。激しく幾度か突き上げてやると鼻でも呼吸が出来ることが分かったのか、歯向かうことはやめて大人しく快楽を享受することに決めたらしい。時折薄く開かれた唇から舌を出し、掌を舐めてはまた舌を口腔へと戻す。特に桓騎からみたら意味のない行動であったが溜まらなく愉快な気持ちになった。次第に鼓動が早くなり射精感が強まっていく。高みへと駆け上がれるよう浮かされたように腰を振りたくり、息を詰めるのと同時に結合部分を深める為に肩を持っている指に思い切り力を強く入れ、脳を揺らした。
「っ……」
最奥に吐き出した桓騎の精は止めどなく陰嚢から出され、何度か痙攣を重ねて最後の一滴まで絞り出す。同じくして男も軽く果てたらしく、先ほど出した残滓が数滴、草木染めの褥に染みを作った。桓騎は大きく息をつき、それから再び緩く動き出す。吐精した反動で身体を動かしたくなかったがまだ欲は収まっては折らず、睾丸は未だに精を吐き出そうと次の射精を待ちわびている。口を塞いでいた手を放し、男の上げたままの腰からとろりと垂れ落ちそうになり色が無くなっている精を掬いとり桓騎は今どうなっているかを分からせるように男の腹へ塗りたくった。
「あっ……? 桓、き、……も、やめっ、……!」
「これで終わる訳ねェだろ。大バカが」
それだけ言うと再び律動を始める。男の意味のない母音が室の壁を反響するが、行為は続けられていく。
帳は降ろされた。交情はまだ始まったばかりだ。