「ナツさん」

スティングがキスをしてくる。触れるだけの優しいキス。チュッ、チュッ、とリップ音だけをたててオレに触れている。スティングはいつもこうしてオレを甘やかす事を第一としていて、歯が浮くような恥ずかしいことや、可愛いって褒めてくるけど、オレは男だし女みたいに柔らかくも可愛くもねぇぞ、っていつも言うんだけどナツさん可愛い、オレの嫁になって、って言われて終わる。
スティングぐらいの男なら女に困るはずないのに、といつも思うけどスティングとキスしたりその、セックス、するのは嫌いじゃねぇからいいかなって思う。要するに今のこの恋人の関係を受け入れている。
スティングは誰にだって優しいわけではないらしい。女にだって気に入らなければ冷たくする。まだ、オレはそういうところをみてないし、スティングもナツさんに冷たくするわけねぇよ、と苦笑いをしながら喋っていた。

「ナツさん、ね、シたい」

マフラーをスルスルと取られて普段余り晒されていない首元がひんやりとした外気に触れる。鎖骨には、前にあった時に付けられた鬱血の後はもう残ってない。
オレは前回キスマークを付けられた辺りの鎖骨に手を触れて視線をやる。この、日に当てられてない白い肌部分は自分の部位でも女々しくて余り好きじゃない。肌が白いなんて、日焼けを気にしてるルーシィみたいだ。

「ナツさん?」
「あ、うん、するんだろ?」

不思議そうな顔で覗き込まれているのにスティングの声で気がついた。
したくないわけじゃない。オレだって性欲ぐらいある。好きなやつが目の前にいて、求められたらシたくなるぐらいにはあるつもりだ。ただ、別のことを考えていただけ。

「マフラーで隠れてるとこ、白い」
「人が気にしてること言うな」
「気にしてたんだ」
「だってよ、なんか女みてぇ」
「そーかなぁ、オレは気に入ってるけど」

にやにやと頬を緩めてスティングは笑う。
オレは意図をつかめず、首を傾げた。

「なんでだよ」
「キスマーク綺麗につくから」

目を細めて笑みを作る。あ、今からするんだ、と今更ながらに思った。
こういう笑い方になる時、スティングはオレがもう欲しくては欲しくて溜まらないらしい。それに気がついたのはつい最近だ。そしてお決まりの文句。

「ナツさん、欲しい。ナツさんが欲しい」

スティングは微笑みながら、喉仏にキスをした。それもすごく嬉しそうに。
その笑顔をみてオレは何も言えなくなる。恐らく惚れた弱味ってやつだ。コイツのこと好きなんだ、って認識させられる。あー、もうどうにでもなれ。

「全部、やんよっ」

それはどうも、と軽口を叩いてスティングは自分の唇でオレの唇を塞いだ。それは開始の合図。



ちゃんと両想い