※ウェンディ+ナツ



私には昔、グランディーネって、いう優しい竜に育てられていたんだけど、ある時に忽然と姿を消してしまって、暫くはジェラールっていう優しい人と一緒に旅をしてたんだけど、そのジェラールもいなくなっちゃって私は毎日泣いてた。
その後は化猫の宿にずっと預けられてみんなと仲良くやっていたのに、実はそれは幻だった。
その後、ニルヴァーナが無くなったのと化猫の宿も無くなったので私は今ここにお世話になっている。
最初は不安で戸惑ったし、夜に化猫の宿が恋しくて泣いた日もあったけど、その次の日は必ずと言って良いほどナツさんが大丈夫か、って声をかけてくれた。
ナツさんはよく暴れて物を壊してエルザさんに怒られたりするけど、本当は優しくてとっても強いお兄ちゃんみたいな存在。
ナツさん私がシャルルとクエストに行って帰ってくると、お帰りって言って頭を撫でてくれる。あ、撫でてくれるのは嬉しいけど、沢山撫でられるとせっかくセットしてるのが乱れちゃうのはちょっと困るかな。
ナツさんの周りにはいつも人がいて、ハッピーやルーシィさん、グレイさんやエルザさんがいつも笑ってる。その雰囲気を見ていていつもいいな、って思う。家族ってこんなにあったかいんだなって。

「ナツさんっ」
「なんだ?」

いまナツさんはスパゲティをもぐもぐと頬張っていた。向かい合わせのテーブル席に座って、だったままの私を見ている。
ハッピーはテーブルの上に座って魚を食べていた。

「どしたの?ウェンディ」
「あ、あの」

私は言いたいことがあった。ナツさんを一度で良いからお兄ちゃん、と呼んでみたかった。
ジェラールも命の恩人だったけど、前から助けて貰ってたこと、優しくされたこと、より年が近くていつも気にかけてくれること。私には兄弟がいないからきっと兄がいたらこんな感じなのかなって、いつも思ってた。だから今日こそ、ナツさんの許しをもらってお兄ちゃん、て呼ぶことを決めていた。
もちろんこれはシャルルにも言ってない。

「ナツさん、あの、怒らないでくれますか?」
「内容にもよるなー」

お皿に残っていた最後の一本を食べて、手を合わせている。満足したようで顔がほころんでいた。
私は勇気を出す。頑張れ私、大丈夫だよ私。

「お、お、お兄ちゃん、て、呼んでいいですかっ?!」
「おにーち、え?ウェンディ?おにーちゃん?」
「なんでナツがおにーちゃんなのさ?」

ナツさんは鳩が豆鉄砲を食らったような、私が何を言っているか分からないという顔をしている。比較的に冷静なハッピーに的確な突っ込みを入れられた私はおずおずと説明し始めた。

「私には兄弟がいなくて、リサーナさんやエルフマンさんたちを見て、お兄ちゃんて、こんな感じなのかなって、ナツさんを見てて思ったんです…」
「なるほどー、ウェンディの言い分も一理あると思います」
「そうかな、ハッピー」
「あいっ!」

えへへ、と私はハッピーに照れ笑いを返してナツさんを見る。未だに状況が飲み込めていないらしいナツさんは今度は頭に疑問符がたくさん浮かんでいるような顔になった。

「つまり、オレがウェンディの兄ちゃんになればいいのか?」
「そーいうことになるねっ」
「そういうことなら任せろっ!」

これは叶ったととっていいのかな。ナツさんは胸を叩いているし、ハッピーも興味津々な目で私をみている。よし、ここは一か八か抱きついてみよう。
私はナツさんに近づいて手を伸ばす。ナツさんの桜色の頭をぎゅうっと抱きしめた。あいにく私はお胸がないからナツさんは私の胸で溺れることはなかった。

「お兄ちゃんっ」

私がそういうと、ギルドがしん、と静まり返った。いったい、どうしたというのだろう。私は慌ててナツさんの頭から腕を放した。ナツさんがもしかして怒ってしまったのかもしれない。だとしたら早急に謝らなくちゃ。
ナツさんに私は慌てて顔をあわせると、そこには見たこともないぐらい顔を真っ赤にしたナツさんがいた。本当に、怒ってるのかも。

「な、ナツさんっ」
「ウェンディ、」
「はっ、はいっ」
「すっげ、恥ずかしいから、お、終わっていいか…?」

え。ナツさんの口から恥ずかしいと言う言葉が出てくるなんて思ってもみなくて、私は思わず目を見開いてしまった。そうか。ナツさんでも恥ずかしいことが、あるんだ。
意外な一面を私の所為でみれたので、私が気をよくしてしまいもう一度ナツさんの頭に抱きつく。
ナツさんはそんな私を邪険にすることなく、逆に固まってしまった。

「ナツさんっ、大好きですっ!」

シャルルとグレイさんが止めに入るまであと少しだけ、ぎゅっとさせてくださいね、ナツさん。



私の世界はあなた色