※最後までナツ一人だけですが注意



三週間目だ。未だに帰ってこない恋人を思いながら自分で身体を慰める。二週は保てた意地も、三週立つと見境が無くなってしまう、自分の性に悲しくなった。
何より悪いのはルーシィだ。彼女がギルドで早く雷神衆帰って来るといいわね、と言われたからだ。忘れようとしていた事を言われてこの様だ。情けない。自分で身体を慰めて、挙げ句には名前まで呼んでしまうなんて。どれだけ開発されているか、彼女は知る由もない。開発された自分の身体を呪うほか無かった。
今日で三週間と四日目。三週と一日から三日までは出して終わるただの自慰でおわった。擦って終わり。疲れて眠ってしまう。昨日まではよかった。
ルーシィの一言で全部台無しになった。
胸を晒し、左手で胸の突起を指で優しく弄りながら右手で性器を擦り上げる。
胸なんて自慰で弄った事がないのに、恋人を思い出して触ってしまう。いつも執拗に苛めてくる彼の指と歯。指で引っ張り、甘噛みされ、弾かれ。その感覚を思い出す度にカウパーが溢れてくる。さすがに甘噛みは自分で出来ないので、親指と人差し指を使いぎゅっと痛くない程度に引っ張ったり、弾いたり、摘まんだり。腰の辺りがゾクゾクと快感が駆け巡る。嫌でも恋人を思い出してしまう。ナツ、とテノールの甘く低い声で。ギルドに居るときには聴くことの出来ない、自分と恋人だけの特別な時の。

「っ…、っ!」

耳元で囁かれるのを想像して、更に性器は硬度を増した。耳が自分の性感帯なのは良く知っているが、それを想像だけで硬くするなんて。恋人がみたら、皮肉られるのだろう。いやらしい奴だな、と。否定出来ないから仕方がない。ただ、そうしたのは誰か。恋人の所為だ。
恋人は所構わず抱きたい時に抱き、ヤりたい時にヤる。と、言ってもそれは昔の事で今はとても良くなった。どちらかの家でするか、ホテルか。
前に一度ギルドでしたときは見つからないか見つかるかの所で行為をして冷や冷やした。流石にそれで懲りたのか二度とギルドではヤらなくなったものの、青姦なんてレベルが低い方。
天狼島から戻って来てからは優しくなったのか、理由は良く分からないが青姦はなくなった。その代わり回数は以前より増えたが。
擦る手は速くなる一方だった。透明な先走りが鈴口からトロトロと溢れる度に手に絡みついて動きが速まる。

「はっ…んっ…!んっ、…っ」

自然と声が出てしまう。
これも全て恋人の所為だ。恋人の手で触れられる度に感度が高まって声が漏れる。いつも我慢したいのに、その声に、手に、体温に、態度に、全てにやられてしまうのだった。屈してしまう。気持ちいい、それだけだった。
カウパーが溢れて止まない鈴口を爪先でカリッと引っ掻くと、肩がびくりと震えるぐらい快感が電流のように背中を走る。続けて、二回、三回と増やしていくとそれに比例して先走りも溢れてくる。ビクビクと自分の自身が脈を打っているのがありありと分かる。
勿論動かしている手は止めることなく扱き続けている。
この状態をとてもじゃないが、相棒のエクシードに見られる訳にもいかず、用を足す個室を閉め切って、ドアにもたれ掛かりながら自慰をしていた。声だって本当は出したくない。しかし、唇を噛み締めても、悦楽を知っている己の身体は声を殺すことなんて知らない。出した方がより気持ちが盛り上がる事を既に知っていた。それさえも興奮材料になってしまうのだった。

「ふっ、…っ…あっ…!っ…!」

突起を少し痛む程度に摘まみ上げると、少し高い声が出てしまう。ジンジンと痛むのに甘い疼きを感じてしまうのは、慣らされているからだろうか。本当は止めたい。けど止めたい。相反する気持ちがそこにはあるが始めてしまったら終わりまてするしかない。もし、途中で止めてもまた再び悶々としだして、こうやって性器を弄るぐらいなら今出し切った方がまだ幸せに思えた。
目に涙が滲む。早く帰って来て欲しい。それは自分の身体を慰めて欲しいのか、それとも寂しいのか。
寂しくはない。仲間がいて、相棒もいる。それでもやはり恋人がいれば尚更嬉しいのだ。やはり自分は寂しいのだろうか。良く分からなかった。
身体は早く触りたいと思う。実際に今こうして自分で自分を慰めて居るのだから。そしてこの行為が余計にその欲望を倍増させているのだ。今も、こうして自分の分身に触れているだけで、触りたい、触って欲しい、こうして弄って欲しいと。
欲求が丸出しではないかと思ったが、今更過ぎる。帰ってきたらどうせ速攻抱かれるのだから、そのぐらいの我が儘も許してくれるだろう。

「ラクっ、…サスっ…!っぁ…!」

名前を口にすると侘しさも募る。早く帰って来て。自分の幼い手ではなく、力強く、男らしい手で、目一杯に。愛しさが溢れて、止まらない。早く欲しい。三週間は待たせすぎだ。
帰って来たら文句の一つでも言ってやろうか。言っても返り討ちにあうのは目に見えている。それでも。それでも、寂しかった。触れたかったと言えば、照れ臭そうにそっぽを向いて恋人は頭を撫でてでもくれるだろうか。早く会いたい。逢いたい。
そろそろ終いを脳が告げ出す。まだ、こうして快楽を追いかけていたいが、既に自身は限界を迎えようとしていた。
最後に抱かれてイかされた時の事を思い出そうとしたが、三週間も前の事なのでぼんやりとしか思い出せ無かった。
最高に興奮したのは、ラクサスが甘い言葉でラストスパートを掛けてきた時だ。愛してるだの、好きだの、可愛いだの、普段なら到底言わないような言葉を口にして、耳打ちしながらイかされた事。
あれはヤバかった。胸が苦しいぐらいにときめいてキュンと来てしまい、自分でも馬鹿みたいに興奮した。普段口にされないから、嬉しさも相まって中を痛いぐらいに締め付けた事を思い出す。
あれ、またして、くんねぇかなと頭の片隅に思い描きながらその場面を想像した。
ナツ、すげェ可愛い。イきたいんなら、イけよ。ナツ、愛してる。

「あっ、あっ、…っ!ラクサスっ…!ラクサス…っ…!」

妄想の中の恋人が思い切り甘く囁いて、自身を扱き上げてくるのを描く。その手を今自身を擦っている手に当てはめる。優しくも、強く、的確に責める。

「っ…んんんっ…!!」

ビクンと盛大に肩を震わせて、欲望を手のうちに吐き出す。個室に備え付けられているペーパーを手に取る暇さえ与えず、出してしまった。
それほどに切羽詰まっていた。自分の手が気持ち良い訳ではない。理想の恋人が、優しくしてくれたから。余裕がなくなる程夢中になって性器を擦っていただなんて。
息が荒いままペーパーに手を伸ばし、自分の手と自身にたっぷりとついた精液を拭い去る。シャワーを浴びる気持ちも起こらず、このまま朝までぐったりと眠りたい気分だった。早く逢いたい気持ちも、残っている。このままここに居ると、もう一度始めて、次は情けなくも泣きながらしてしまいそうで、怖かった。逢いたいという気持ちはこんなに弱気にさせるのか。気持ちの余裕の無さにがっくりと肩を落とした。
手を拭ったペーパーを便器の中に捨てて、水に流す。このまま自分の気持ちも、流れていけばいいのに。水流を見ながらそう思う。
締め切った個室の換気をするために小窓を少しあけて、電気を消す。部屋は真っ暗で、相棒の寝息が聞こえるだけだ。どうやら起こしてはいないらしい。胸をなで下ろし、相棒を起こさぬように、静かにベッドに入った。
何も写っていない天井をじっと見つめて、静かに眠気を待つ。
恋人が、帰ってくるまであと五時間。ナツはそんなことなど知りもせず、まだ帰って来ない恋人の顔を思い出しながら、静かに目を閉じた。



あなたじゃないと、駄目なの