「そーいえば」
「何だよ」
「オレ、ナツさんの事好きなんだよね」

オレは思わず手に持っていたアイスクリームのコーンを滑り落としそうになった。まさか、こんな白昼堂々と告白されるとは思ってもおらず鳩が豆鉄砲を食らった様な、間抜け面をスティングに晒す。そもそも鳩が豆鉄砲を食らう、自体がよく分からないが前に何かの拍子で驚いた時にルーシィがそんな言葉を使っていたのを思い出し、オレも使ってみた。使い方は間違っていないが、コイツの告白はそもそも間違っている。場所があり得ないし、雰囲気もおかしい。そんなさらっという言葉ではない、はず。自分がしたことがないから分からないけど。でもオレならきっと、もっと静かで、二人っきりで、雰囲気のある場所で、っておかしくないか。しかも相手に想像してるのが、コイツで、オレは顔を真っ赤にしてるし、今も真っ赤にしていた。気がついたらなっていた、と言った方が近い。まさか自分の顔がこんなに熱くなるなんて思ってもなかった。こんな言葉で、だ。

「おま」
「だって、オレ気がついたんだって。ナツさんすげー好きだなって」
「もと、もとっ」
「うん、元々好きだったよ。ナツさん尊敬してるし、今もそれは違ってないし」

元々、オレにナツさん、ナツさんばっかりいってくるから尊敬の意味での好きなんだとばかり思っていた。だから、この告白だってきっとそうなんだって頭の片隅では思っていたのに、相反してオレの半分以上の脳みそは恋愛での意味で、捕らえてしまったのだ。自分が情けない。相手がそういう気持ちでいたら良いのに、という憶測が憶測を呼んでこの赤面だ。勘違いも甚だしい。

「顔真っ赤。かわいいね、ナツさん。オレが、そういう好きだって気がついてた?」
「っ…」

違う。気がついていたか、と聞かれればそれは否定する。気がついていなかった、というより自分がスティングの事が好きで好きで仕方無かったから、そういう好きだったらいいのに、と思ったからこうなった。だから、馬鹿にされても構わないと思っていたのもまた事実。
オレは溶けそうになるアイスクリームを一口頬張りながら首だけを横に振る。
スティングがそっか、と簡素に返事をした。オレからは表情が見えないので感情が読めない。

「じゃあなに、期待してたってわけ?」
「っ!」

そうだ、期待していた。その好きであればいいのに、とあの一瞬で。それ故に顔は赤くなるし、ぎこちない態度を取ってしまっている。あからさまなイエスだ。

「ナツさん、分かり安いね。もちろんオレもそのつもりで言ってるけど、いいの?」
「えっ」

顔を上げてスティングを見ると、もうアイスクリームを食べ終わったのか、親指と人差し指をそれぞれ一舐めしながらオレに目線をよこす。あ、やばい。心拍数上がってる。こうやって、横目でみられるのオレ、すげー好きかも知れない。

「オレ、ナツさんのこと離さないよ?だってずっと追いかけてきた人で、その上好きな人だよ?いいの?しつこいよ?」
「し、ってる」
「だよね」

大げさに肩を竦める振りをしたスティングはオレににこやかに微笑んだ。あー、やばい。オレはこの笑顔に落とされたんだ。ナツさん、ナツさん、って呼ぶこの笑顔に。
腹が立つ。オレばっかり好きみたいで。オレだって最初は鬱陶しいやつだな、って思っていたけどどんどん慣らされていったんだ。その慣らされていくっていうのも腹が立つし、やっぱりなんかおかしい。
そうだ、そもそもこんな昼下がりに告白する馬鹿と、頷くやつがあるのかっていうのな。いるんだよな、ココに。その馬鹿が二人。

「ナツさん、付き合って下さい」
「そういうのは、もっと雰囲気のある場所で言えよな、ばか」

結局コイツに惚れてる、オレも一緒と言うことで。



同じ穴の狢