※北方史記二次創作


叔父の衛青が肩に酷い傷を受けたと知って、霍去病は酷く心中だけを取り乱した。下の者たちに同様されないことをひた隠したが、衛青軍の中でも生え抜きの副将超食其には見破られていそうだが、今はそんなことはどうでも良い。それより衛青が心配だった。
すでに陸英という将が手当てに当たっており、衛青は眠っているらしいことを聞いているので、霍去病は衛青が寝かせられているという天幕に馬を走らせる。匈奴の単宇の首がすぐそこまでというところで、今までの匈奴とは異なった戦い方をしてくる兵にやられ、そこで衛青の肩も貫かれた。許せない。叔父に怪我をさせた自分に腹立たしく思った。
天幕の入り口は歩兵が二人ついている。その者たちを払い、霍去病はおろされていた幕を上げ、静かに入って行った。炉が炊かれ、暖かくされている。衛青はねむっているらしく胸を規則正しく上下させていた。
頭部のあたりに腰を下ろし、胡座をかく。具足の音を極力立てないよう忍ぶように叔父衛青の顔色を見た。
元々が白く、日に焼けにくい肌質なのか血を失っている衛青の顔は青白く見える。この叔父の背を追い、殴りつけられ従者としてこの軍に潜り込んだ霍去病は、土ぼこりでまみれた指先を衛青の顔にそっと添える。
「おじ上……」
二人きりの時は甥と叔父、肉親として呼んでいいと許可を得ている。久しく読んでいなかった呼び方で衛青を呼んでみたが反応はない。ただ呼吸をしているということはまだ生があるというその事実に感謝をした。
衛青が昔ほど果敢に攻め込んで行かなくなったことを霍去病は様々なところから聞き及んでいた。よく出入りしている未央及では官吏たちが噂をし、戦をやめろと口々に言っている。それでも大将軍である衛青に帝は悲願成就のために匈奴の地への進行は止めないだろう。霍去病はそれに付き従い、衛青と自分の武功を立てるために動くだけだった。
それから暫く経ち、営舎に移ると衛青が部屋へ顔を出した。その事実が喜ばしく一瞬顔を綻ばせ喜色を滲ませようとしたが、すぐに引き戻す。大将軍でもある衛青が、これが罰であると告げられ、小刀を手渡され傷口の膿を出す。必要な治療なのはわかっており、服が膿で汚れることなど衛青の傷に比べればどうでもよかった。それより小刀で膿を出す際に痛くないか、と尋ねた時に気にするなと言われ、わずかに顔を歪めながら痛みに耐えている衛青に不覚ながらもそそられてしまったことに霍去病は自分へ落胆した。
その後、この手当てが罰だと言い渡され腹立たしさがこみ上げてきた。どうして自分ではなかったのか。衛青を傷つけてしまったのか。歯噛みする思いで傷口が開かないよう持ってきた布と運ばせた湯で身体を拭いていく。細身ながらもしっかりとついた筋肉は軍人という体つきをしている。時折燭が揺れ、陽に当たらない箇所の肌を照らし、霍去病は思わず視線を背けそうになったが表情には出さず淡々とこなしていく。
手当てをし終え一通り話すと衛青は霍去病に参内せよと言い渡しさっさと出て行ってしまう。もう少し叔父と喋っていたかったがそれもかなわず、手元にあるのは拭っていた布だけが霍去病の手に握りしめられている。扉の近くに立っていた従者に桶に張られていた湯を持って帰らせ、人払いをする。
今は衛青以外の人物と顔を合わせる気になれなかった。
衛青は霍去病の憧れであり、軍功を上げる偉大な人物になっていた。幼い頃は自慢の叔父であり、身内であったが成長するにつれ道がそれつつあった。肩を並べ、前衛に立つ軍人でありたい。それ以上に、叔父という存在でありながら恋情に近しいものか時折沸き立つ時がある。衛青という叔父はめったに笑わなかったが、副官や帝の昔馴染みの侍中に対しては顔を綻ばせる所を見たことがある。そのたびに胸にひりつく何かを感じ、霍去病は戸惑いを覚えていたのだがそれが慕情だと気がついたのはつい最近だった。それも匈奴のあまり年齢の変わらない男に斬られた後だ。
草木染めの布は湿っており、衛青の膿や血も着いている。しかし衛青そのものだと思えば汚いと思えなかった。洗い流されていない土ぼこりや汗、体臭が未だ残っている。
良くないと分かっていながらも衛青はその布を顔まで持ち上げ鼻に当て大きく吸ってみると、血の匂いと衛青の体臭が入り混じり、鼻腔を通って霍去病の胸いっぱいに広がった。これが叔父の匂いだと思うと、下半身に血が集まり出す。
そんな気持ちで嗅いだ訳ではないのに、身体は言うことを聞かず本能で反応してしまうことに力なく笑うしかなかった。
もう一度大きく吸ってみる。未だ残り香が湿った布の奥から滲み出し、霍去病の身体にじわりと染み込んでいくのが分かった。
軍袍を締め付けていた帯を解き、胡服の前を寛げる。下着は緩く押し上げられ、すでに緩く立ち上がっている自分の愚息に指をかけた。
良い布では無いため、麻布の感覚が痛いほど裏筋から伝わってくる。すぐに脱ぎ捨てようかとも思ったが何度かさすりあげると特有の感触を味わってから腰裏で結ばれている紐を解く。呆気ない程簡単に解け、寝台に落ちていく。下着を取り払われた陰茎は既に硬くそり上がり、腹部へ着くほどに勃起していた。叔父に見られなくて良かったと心の底から安堵する。こんな情けない姿を見てほしくは無い。
男根に指を軽くかけ、ゆっくりとした手付きで上下に扱く。怪我の手当てにあたっているときにちらりと見えた乳首を思い浮かべるだけで、先走りが鈴口からとろりと溢れ出した。叔父はどんな声を出しながらまぐわうのだろうか。性の匂いを微塵も感じさせられない衛青は妻も子もいる。
子を成しているということは性行しているということだった。衛青の霰もない姿を思い浮かべてみたが、想像が出来ない。今こうして逸物をこすり想像しているのは間違いなく叔父の姿だが、かといって自分の下で声を上げている姿は思い描けない。なら声を抑えているのはどうだろうか。
快楽に耐え忍び、唇を噛み締めながらしかし腸壁は悦びながら霍去病の陰茎を締め付けているなら。霍去病の肉竿は一気に熱を持つ。あり得なさすぎるその妄想が熱を押し上げた。
「おじ上……っ、……はぁ……」
霍去病の絡んでいる指が少し強くなる。徐々に手の動きが早まり、それに呼応するように鼓動も早くなっていく。
想像の中の衛青は霍去病に見られまいと両方の前腕で顔を隠し、突き上げてくる肉竿から逃れようと必死にもがいている。奥を穿つ度に唇を引き結び、しかし窄まりは陰茎を掴んで放さない。尻で受け入れるのは初めてで、まるで生娘のような仕草をみせる叔父を苛めたくて仕方なくなっている。
「おじ上っ、おじ上っ……! はっ、……はっ……」
指を筒のようにし、男根を押し込めるように腰を突き上げる。皮が上下する度に被さり雁首に引っかかる度に臀部が浮いてしまう。日に焼けていない白い胸に何度も口づけを落とし、吸い上げ自分のものだと跡を幾つもつける。着替えを見られることがまずない大将軍だからこそ、霍去病はここぞとばかりに鬱血痕を刻んでゆく。
「恥ずかしがるおじ上も、愛らしいです……っ、はっ、ぁっ……、おじ上、顔を、お見せ下さいっ……」
霍去病の想像の中の衛青は嫌がりながら首を振り、眉根を詰めながら霍去病の表情をみると、抵抗を止めてしまう。こちらが切羽詰まっているのが分かったのか、顔を背けながら声をひたすら押し殺した。
「はっ、はっ……おじ上っ、俺、も、出そうです……っ」
気持ちが良すぎて中で精を吐き出したかったが、次の日に障るのでぎりぎりのところまで引き抜き、再び貫く。
「――っっぐぅ……!!」
奥の奥まで突き上げてから勢い良く男根を抜去し胸元まで持っていき、妄想と同調するように力強く男根を扱きあげ陰嚢に溜め込んでいた熱を一気に放出させた。
久々の自慰もあってか粘り気が強く、肚の奥から何度も押し上げられるほどの熱を感じ、腿周りの筋肉を何度も痙攣させて最後の一滴まで白濁を絞り出した。空想の中の衛青の胸に出した精を、まだ硬いままの男根の切っ先で塗り広げ、緩く立ち上がった乳首を何度か引っかき、霍去病は衛青を自分のものだという固持を示した。衛青の陰茎はまだ硬度を保っており、頂点へと達してはいない。あくまでも霍去病のみが気持ちよくなる行為だからだった。
本当に叔父が抱けるのならばおそらく肉竿は硬いままだろうが、熱を出した陰茎は力を無くしつつある。そこで夢想の衛青は形を潜めた。
吐き出されぬるりとしている子種が手のひらを汚す。これが衛青のものなら舐め上げるところを見せつけたが、生憎霍去病には自分の精を舐める趣味はない。握りしめていた布で手を拭い、再び布を嗅いでみると、自慰を行う前より臭いは薄まってしまい変わりに霍去病自身の青い精の臭いが鼻についた。
霍去病は肩を落とし、寝台から足を下ろして床につける。自制がきかず衛青を想像しながら慰めてしまったという自己嫌悪を引きずりつつ、布を洗いに行く手間へうんざりとしつつも霍去病は室を後にした。どうか叔父と顔を合わせませんように。
祈る思いは空へと消えていく。


北方史記/霍去病→衛青