メモ
No.51
2020. Aug. 27(Thu)
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ひさびさに書いた!!!
#短文
嫉妬心が強いスティングと、独占欲の強いナツさん
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隣にいる彼は、とても良くモテる。
ギルドマスターの彼は街の人々に声をかけられ、男女ともに好かれていた。
特に熱心な彼のファンであろう女性たちに話しかけられているのをよく見ている。
よく見ている、というのは自分が隣にいるのにも関わらずに話すからだ。それを嫌とは言わない。恋人とは公言されていないし、おそらく彼はする気もないだろう。
嫉妬心がないわけではないし、こういう時に独占欲をほんの少しでも出せばきっと可愛げがあるのかもしれない。が、出す気には到底なれなかった。
いくら恋人とはいえ、日常茶飯事に起こるのでいちいち腹を立てていたらこちらの身が持たない。
今日もまた、声をかけてくる女性たちを彼はもてなす。
剣咬のファンです。スティングさんですよね。応援してます。いつもありがとう。これ、受け取って下さい。
市販の菓子折りだろうか。彼女たちから受け取り、手を振り見送っている。
一連の応対を少し後ろで見つめ続けていたが、彼女らが去ると彼の横にすぐ並び直した。どんな顔をしているか、と少しだけ表情を盗み見たが普段と変わらないようで、視線は悟られないようにすぐに戻した。
「本当、飽きねぇのな」
「飽きる?」
「いつも同じ対応じゃねぇか」
言われる言葉は大体いつも似たようなものだった。
ファンです、好きです、かっこいいです。それに対して彼はありがとう、と必ず礼を添える。
同じ対応をしていれば気を持たせることは恐らくないだろう。
「まあ、型にはハマってるとは思うけど。どうしたの? ナツさん」
つまらない、といえばいいのに言えないのは同じ男だからか。彼、彼女らの相手をする度に自分から離れてしまう。分かっている。嫉妬してもキリがない。それでも2人の時は自分だけを見て欲しいのも確かではあった。
「別に」
「そ?」
グッと喉の奥に飲み込んで、素っ気ない言葉を返す。彼は特に気にする様子もなく、そのまま歩く。
こういう時、彼のその気にしない態度が少し腹立たしかった。もう少し彼にも独占欲があればいいのに、と。
そうすれば、大切な人との時間を大切にしたいから、と言って断るのではないか。勝手な憶測だと自分でも思ったが、これぐらいしていないと割に合わず、汚らしい感情で心がいっぱいになるのは避けたかった。
「ナツさん」
「なに」
急に名前を呼ばれて、顎をわずかに上げる。彼が、目を細めながら少しだけ口角をあげていた。
「ナツさんは知らないと思うんだけどさ」
口を開くのと同時に膝を少しだけかがめて、視線を合わせる。真剣な話をする時の癖。彼の本来の性格もあるのだろう。あの彼が大事にしているエクシードには日頃から膝をついて話をしている。自分に対しても、目線を合わせてくれるのは、子供扱いされているようでほんの少し照れくさいが、彼の優しさが滲み出ていた。
それから顔をぐっと近づけ、耳朶に口唇を寄せひっそりと囁く。
「?」
「相手してた子の中に、ナツさんのファンもいるんだよ」
「そーなのか?」
「うん。だから、丁重にお断りしてるんだよね」
「お断り?」
「だってナツさんは恋人でしょ? オレは慣れてるから良いけど、ナツさんに好きですなんて言われたら、嫉妬でおかしくなりそう。だからナツさんはオレだけを見てて」
嫉妬はするのか。新しい一面を今更ながら知った。
寄せられていた顔はスッと戻り、視線だけ落とされる。
「いい?」
念を押すようにそれだけ言うと、自分の手のひらにスルリと手を絡められてそのままあれよあれよと言ううちに手の甲に軽く唇を落とされて、離れていく。
その動きを見ていたさっきとは違う彼女らが悲鳴を上げはじめて、そこで初めて我に返った。
「おま、ここっ、どこだとっ……!!」
持ち上げられていた慌てて手を引っ込める。人通りがたくさんの場所で、口をパクパクさせながら羞恥と戦うはめになるとは。
その場を早足で立ち去りたかったが、満足げに笑う彼にそれ以上言い返せず、満更でもない思いをさせられてしまった自分自身をここで殴り飛ばしてやりたかった。
己の魔法を使った時よりも、手の甲が熱いのは気のせいだろうか。
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嫉妬心が強いスティングと、独占欲の強いナツさん
隣にいる彼は、とても良くモテる。
ギルドマスターの彼は街の人々に声をかけられ、男女ともに好かれていた。
特に熱心な彼のファンであろう女性たちに話しかけられているのをよく見ている。
よく見ている、というのは自分が隣にいるのにも関わらずに話すからだ。それを嫌とは言わない。恋人とは公言されていないし、おそらく彼はする気もないだろう。
嫉妬心がないわけではないし、こういう時に独占欲をほんの少しでも出せばきっと可愛げがあるのかもしれない。が、出す気には到底なれなかった。
いくら恋人とはいえ、日常茶飯事に起こるのでいちいち腹を立てていたらこちらの身が持たない。
今日もまた、声をかけてくる女性たちを彼はもてなす。
剣咬のファンです。スティングさんですよね。応援してます。いつもありがとう。これ、受け取って下さい。
市販の菓子折りだろうか。彼女たちから受け取り、手を振り見送っている。
一連の応対を少し後ろで見つめ続けていたが、彼女らが去ると彼の横にすぐ並び直した。どんな顔をしているか、と少しだけ表情を盗み見たが普段と変わらないようで、視線は悟られないようにすぐに戻した。
「本当、飽きねぇのな」
「飽きる?」
「いつも同じ対応じゃねぇか」
言われる言葉は大体いつも似たようなものだった。
ファンです、好きです、かっこいいです。それに対して彼はありがとう、と必ず礼を添える。
同じ対応をしていれば気を持たせることは恐らくないだろう。
「まあ、型にはハマってるとは思うけど。どうしたの? ナツさん」
つまらない、といえばいいのに言えないのは同じ男だからか。彼、彼女らの相手をする度に自分から離れてしまう。分かっている。嫉妬してもキリがない。それでも2人の時は自分だけを見て欲しいのも確かではあった。
「別に」
「そ?」
グッと喉の奥に飲み込んで、素っ気ない言葉を返す。彼は特に気にする様子もなく、そのまま歩く。
こういう時、彼のその気にしない態度が少し腹立たしかった。もう少し彼にも独占欲があればいいのに、と。
そうすれば、大切な人との時間を大切にしたいから、と言って断るのではないか。勝手な憶測だと自分でも思ったが、これぐらいしていないと割に合わず、汚らしい感情で心がいっぱいになるのは避けたかった。
「ナツさん」
「なに」
急に名前を呼ばれて、顎をわずかに上げる。彼が、目を細めながら少しだけ口角をあげていた。
「ナツさんは知らないと思うんだけどさ」
口を開くのと同時に膝を少しだけかがめて、視線を合わせる。真剣な話をする時の癖。彼の本来の性格もあるのだろう。あの彼が大事にしているエクシードには日頃から膝をついて話をしている。自分に対しても、目線を合わせてくれるのは、子供扱いされているようでほんの少し照れくさいが、彼の優しさが滲み出ていた。
それから顔をぐっと近づけ、耳朶に口唇を寄せひっそりと囁く。
「?」
「相手してた子の中に、ナツさんのファンもいるんだよ」
「そーなのか?」
「うん。だから、丁重にお断りしてるんだよね」
「お断り?」
「だってナツさんは恋人でしょ? オレは慣れてるから良いけど、ナツさんに好きですなんて言われたら、嫉妬でおかしくなりそう。だからナツさんはオレだけを見てて」
嫉妬はするのか。新しい一面を今更ながら知った。
寄せられていた顔はスッと戻り、視線だけ落とされる。
「いい?」
念を押すようにそれだけ言うと、自分の手のひらにスルリと手を絡められてそのままあれよあれよと言ううちに手の甲に軽く唇を落とされて、離れていく。
その動きを見ていたさっきとは違う彼女らが悲鳴を上げはじめて、そこで初めて我に返った。
「おま、ここっ、どこだとっ……!!」
持ち上げられていた慌てて手を引っ込める。人通りがたくさんの場所で、口をパクパクさせながら羞恥と戦うはめになるとは。
その場を早足で立ち去りたかったが、満足げに笑う彼にそれ以上言い返せず、満更でもない思いをさせられてしまった自分自身をここで殴り飛ばしてやりたかった。
己の魔法を使った時よりも、手の甲が熱いのは気のせいだろうか。畳む